2021.08.11

人事評価制度の見直しを検討しよう! 見直す目的や代表的な手法を紹介

はじめに

人事評価制度は、従業員の評価だけでなく処遇や人材配置の判断材料としても欠かせないものです。しかし「評価制度がうまく機能していない」「従業員の評価に対する納得度が低い」と悩む企業は少なくありません。
人事評価制度を正常に機能させるためには、必要に応じて基準の再設定を行うことが重要です。今回は、人事評価制度を見直す目的や、評価制度の代表的な手法を紹介します。

そもそも人事評価制度とは? 人事評価制度が成り立つ3つの要素

人事評価制度とは従業員の業務における作業効率や生産性といった働きに対して、具体的かつ定期的に査定を行う制度のことです。人事評価制度の評価軸は「能力」「業績」「情意」の3つの要素から成り立っています。

具体的には、業務上のスキルや知識は「能力評価」、成果や目標への達成度は「業績評価」、従業員の意欲や態度、責任感については「情意評価」で評価します。

従業員に正しい処遇を与えたり、育成を促進したりするためには、これら3つの要素を組み合わせ、公正な評価を行うことが重要です。

人事評価制度を見直しする4つの目的

人事評価制度を正常に機能させるためには、適宜、内容の見直しを行うことが重要です。
ここでは、人事評価制度を見直す4つの目的を解説します。

1.従業員の処遇を適切に改善するため

人事評価制度を見直す目的のひとつは、従業員の処遇を適切に改善するためです。
人事評価制度は、昇進・昇格の判断や給与査定を行う際の重要な情報源であるため、評価基準に誤りがある場合は、従業員の処遇に影響が出てしまう場合があります。

また評価基準が曖昧だったり、設けられていなかったりすると、年功序列や上層部との関係性などが従業員の評価につながることがあり、不公平に感じさせる可能性もあるでしょう。

見直しによって制度を整えれば、従業員に対して年齢や勤務年数に偏らない正しい処遇を行えるようになり、不満の改善に効果的です。

2.適材適所の人員配置を行うため

2つ目の目的は、適材適所の人員配置を行うためです。
評価制度の見直しによって、従業員の能力や適性をより正確に把握できれば、配置の転換や昇格に伴う部署異動などを実施できます。これにより業務への人員配置を最適化できれば、企業全体の生産性の向上につながるでしょう。

配置転換や部署異動には不満がつきものですが、人事評価制度によって客観的な評価がされると、従業員は自身の業務の成果や目標の達成度を振り返りやすく、人員配置に納得しやすくなるという効果もあります。

3.従業員の人材育成を促進するため

3つ目の目的は、人材育成のためです。
自社の求める方向性や戦略に不可欠な人材像を見いだし、計画的な人材育成を実現するためにも、重要です。仮に現在の評価基準に対する不満がなくても、企業側が従業員に求めるレベルが本来の基準に達していなければ、制度が正常に機能しているとはいえません。

そのため、見直しの際には「どんな人材がほしいのか」「今いる人材をどう育てていくか」をあらためて確認するとよいでしょう。求めるレベルを満たす基準を再設定することで、より効果的な育成を促すことが可能です。

4.企業の業績向上につなげるため

4つ目の目的は、企業の業績向上のためです。

評価基準を明確にし開示することで、会社として何を大事にしているか、が伝えることができます。結果として、従業員の目標や行動が変わってくるでしょう。たとえば、評価の一つとして、「残業時間が少ないこと」をいれれば、生産性の向上を意識する人が増え、企業全体に良い影響をもたらします。
このように、企業としての求めていることに個人のベクトルを合わせ、業績向上につなげることにも効果的です。

企業が人事評価制度を見直しするメリット3つ

ここからは、企業が人事評価制度を見直しするメリットを3つ紹介します。

1.従業員のモチベーションが向上する

従業員の業務への意欲やスキルを正しく評価すれば、従業員のモチベーションの向上に繋がります。偏った基準のままでは人員配置のミスマッチを引き起こすだけでなく、従業員に対して納得感のない給与や処遇を与えることとなり、「頑張っても評価されない」と意欲の低下を引き起こしかねません。

人事評価制度を見直せば従業員の能力や評価に見合った部署への配置が可能です。また従業員の成果を正しく処遇に反映することで、従業員がより意欲的に業務に取り組むよう促す効果にも期待が持てます。

2.企業と従業員との信頼関係構築ができる

従業員とコミュニケーションをとりながら見直しをすすめることで、信頼関係を構築できます。

たとえば、従業員から、現在の評価制度の課題をすくいあげたり、アンケートをとったりし、一方的に決めず皆でつくりあげていきます。
そうすることで「この会社は自分の働きや意見をしっかり見てくれている」と従業員から感じてもらえることもあるでしょう。また、新しい制度での運用時もコミュニケーション量を増やしながら浸透させることでより満足度が向上していくことでしょう。

3.従業員のスキル再発見につながる

今まで見落としていた従業員のスキルの再発見にもつながります。
適材適所の人材配置に変更をする過程で、誰がどんな能力を持っているのか、を改めて見直します。その際、定量評価だけで見えづらかったことが可視化される場合があります。
たとえば、現場の人だけが知っている隠れた才能を持つメンバーや実績はまだ伴っていないが、少しづつ成長している将来有望な若手、などです。
現行の制度では見落としていた能力が発見できれば、今後そのスキルを伸ばすための取り組みが行えるでしょう。

企業が人事評価制度を導入するデメリット2つ

人事評価制度の見直しを行うことには、いくつかのデメリットもあります。見直しの際は、デメリットについても考慮するとよいでしょう。

1.納得感のある評価でないと従業員のモチベーションが低下する

評価基準を見直した結果、従業員にとって納得できない、もしくは公平性の乏しい基準を設定してしまっては、かえって従業員のモチベーション低下を招く恐れがあります。

たとえば、結果の出やすい業務とそうでない業務で評価に差が出てしまったり、評価者と従業員の相性が結果に関わったりすると「正当な評価が得られない」との不満につながります。最悪の場合は離職者を出すことにもなるでしょう。

人事評価制度を見直す際は「それぞれの業務で異なる基準を設ける」「共通項のみを評価対象にする」「上下関係や相性が評価に介入しない基準の導入」などの点に注意が必要です。

2.人事評価制度見直し時にコストがかかる

既存の制度を変更する場合、人件費やシステム費用などのコストがかかります。
最も大きいのは、人件費です。現状分析、評価設計の会議、ルール作成などにかかる準備時間や、従業員への説明、オペレーション変更など運用開始後の時間、と現行の制度のままであれば、発生しなかった時間的コストが増えます。結果として、時間的コストは人件費の増加につながってくるでしょう。

また、評価制度に外部ツールを用いてシステム化している場合は、改定や再導入にも費用がかかります。もちろん、上記同様、システムを使いこなせるまでにも時間的コストが発生する可能性もあります。

現状すでに不備が見つかっていたり従業員からの反発が起こったりしているならば、早急な見直しが必要です。しかしまだその段階ではない、あるいは見直しを検討しているという段階であれば、本格的に取り組む前にどの程度のコストがかかるのか見通しを立てることが大切です。

代表的な人事評価制度の手法3つ

ここからは、人事評価制度として導入されている代表的な手法を3つ紹介します。それぞれの特徴を捉えた上で、自社に適した手法を選択するとよいでしょう。

1.MBO(目標管理制度)

MBO(目標管理制度)とは、従業員が自主的に目標を定め、企業と目標や認識を共有し、管理する制度のことです。従業員が自ら立てた目標の達成を目指して業務に取り組む仕組みのため、従業員の業務への自発的な参加を促すことや意欲向上に期待ができます。
企業側が目標設定の難易度をアシストしながら調整できるため、従業員の能力が引き出やすいというメリットもあります。評価は目標の達成度をもとに行うため、双方が納得しやすいのも特徴です。

2.360度評価

360度評価とは、業務に関わる上司や部下、他部署の従業員といったさまざまな人間が対象従業員を評価する制度のことです。「多面評価」や「周囲評価」とも呼ばれています。立場の違う複数の視点から客観的に評価するため、従業員の業務への姿勢や行動などの情報が多角的に取り入れられます。

また、上司や部下に限らず、評価者となり得る同僚や他部署の社員との関係を構築するきっかけにもなり、社員同士の交流を促進することや意識改革をすすめる効果にも期待ができます。

3.コンピテンシー評価

コンピテンシー評価とは、企業や組織内において高い業績を上げている人材の行動をモデルに設定し、そのモデルに沿って社員の行動を評価する制度のことです。たとえば「業務におけるコミュニケーション能力」や「重要事項に対しての意思決定・実行力」、「スケジュールおよびストレス管理」などが評価項目として挙げられます。

モデルの行動を評価の基準にしているため努力すべき項目がわかりやすく、効率的な人材育成を実現できるほか、評価者の主観が介入しない公平な評価を実施できます。

評価方法 特徴 有効な評価対象
MBO(目標管理制度) ・従業員が自主的に目標を定め、企業と目標や認識を共有し、管理する制度
・従業員の業務への自発的な参加を促すことや意欲向上に期待ができる
・企業側、従業員双方が納得して進めやすい
業績評価
360度評価 ・業務に関わる上司や部下、他部署の従業員といったさまざまな人間が対象従業員を評価する制度
・従業員の業務への姿勢や行動などの情報が多角的に取り入れられる
・上司、部下、同僚だけでなく、他部署の社員との社内交流につながる
情意評価
コンピテンシー評価 ・企業や組織内において高い業績を上げている人材の行動をモデルに設定し、そのモデルに沿って社員の行動を評価する制度
・努力すべき項目がわかりやすく、効率的な人材育成を実現できる
・評価者の主観が介入しない公平な評価を実施できる
能力評価

まとめ

正しい人事評価制度の運用は、健全な会社運営に重要な要素です。人事評価制度を見直すことで従業員を正当に評価し処遇を改善すれば、個々のモチベーションアップだけではなく、企業全体の生産性の向上にも繋がります。
一方で評価基準が偏っていると、従業員の意欲を低下させ、最悪の場合は離職者を出すなど不測の事態を招きかねません。人事評価制度を見直す際は、企業の方向性や従業員の性質にあったものかを見定めることが重要です。

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