2021.01.11

人材育成の枠組み「教育体系」を作成|階層別・種類別に整理する

1.人材育成の基本的な枠組みとなる「教育体系」とは

研修は社員が求められる役割を果たすための支援として行われるため、その内容は社員の役割と結びついていることが求められます。
社員に求められる役割は、全社共通のものもあれば職種や役職によって異なるものもあり、研修の全体像を設計する際には職種別や役職別に考えることが重要です。

そのため職種や役職などで異なる社員の役割ごとに、必要な研修テーマを一覧形式で表したものが必要となり、それらを総称して「教育体系」と呼びます。

※教育体系という言葉は、広義では人事評価やキャリアパスまで含めた使い方をする人もいますが、ここでは研修などの社員教育に限定した全体像を意味するものとします。

教育体系は、基本的に縦軸を役職・等級、横軸を教育の種類とした表の形でまとめられ、それぞれのセグメントに研修テーマが割り振られます。

「教育体系のサンプル」

教育の種類は、上の図のように大きく3つに分類されるのが一般的です。
・(一律での)集合研修
・(本人による)選択研修
・OJT

また上記のうち集合研修は、さらに以下の3つに分類されることが基本となります。
・階層別研修
・職種別研修
・全社共通研修

なお、実際に教育体系を作成する際の分類方法は企業によっても多少異なります。
その意味では、既に社内で運用されている教育体系がありましたら、ぜひそちらも参考に、組み合わせる形で作成してみてください。(例えば、選抜研修などを加える企業もあります。)

このような教育体系を作成しておくことで、いつ、誰に、どのような教育が必要かということについて体系的に整理することができます。

2.教育体系の作成プロセス

教育体系を作成するまでには、全部で4つのステップがあります。
「教育体系の作成プロセス」

ステップ①縦軸と横軸を定義する

まずは教育体系の縦軸と横軸を検討します。

縦軸は、自社の役職や等級をはめ込むことで作成可能かと考えられますが、作成に悩む場合は、一度最も細かく分類した役職・等級を並べた上で、教育内容がすべて重なるものについては統合していくという流れを実践してみてください。

横軸は、先ほど紹介した基本となる分類や、自社の教育体系を参考にしてください。

ステップ②社員の役割を明確にする

次に役職や等級、職種ごとに社員へ求められる役割と必要な能力を文章で定義します。

こちらもステップ①の縦軸と同様、既存の職務分掌や業務分掌、人事評価を行う際の基準などを利用することで作成可能と考えます。

このステップは、教育体系を整えるための準備として知識をインプットするステップだと捉えてください。

「いつ、誰に、どのような教育をするか」を考えるためには、会社側が期待している役職・等級ごとの役割を深く理解しておく必要があります。

一言一句まで正確に覚えておく必要はありませんが、各社員に求められる役割の定義を深く理解しておくことで、その後の検討においてもより深く考えることができます。

なお、もしそのような定義が既存のものとしてない場合は、別途考え出す必要が出てきます。教育内容を体系的に整理するためには重要なものですので、作成することをおすすめします。

「教育体系のサンプル※再掲」

ステップ③研修へのニーズを調査する

前回までのステップで教育体系の縦軸と横軸を定義し、縦軸(役職・等級)の役割を明確にすることができたら次のステップは横軸(教育の種類)で行う研修へのニーズ調査です。

階層別研修や職種別研修について考えた時、現場にしか分からないことも多々あり、それぞれの役職や職種でどのような教育が不足しているか研修担当者だけで把握することは非常に困難です。また、人事側が必要と考えた研修が、実は現場からするとそこまで必要なかった、なんてことも起こりかねません。

そのため、どのような研修が求められているかということを受講対象者やその上司などに対してヒアリングすることが重要になってきます。

ヒアリングする際には、ぜひ「自分としてはこういう内容を研修として行うべきだと思っています」といった一案を持って会話をしてみてください。
そうすることで、例えば「そんな研修は現場で役に立たない」「もっとこういった研修の方が嬉しい」といった様々な声を引き出すことが可能になります。

このように、現場の声を聞き入れるかたちで研修テーマを決めた場合、現場管理者や受講者本人の納得度は大きく上がります。受講者やその上司が研修を行う目的や意義に納得して研修を受けた場合は教育効果が高まることからも、このステップは非常に重要です。

※研修担当者として現場の理解と協力を得るさらに詳しい方法については、別の記事で紹介しています。

ステップ④研修内容を絞り込む

研修へのニーズを把握できたら、最終ステップとして研修内容を絞り込むことで教育体系は完成します。
ここでいう研修内容とは、例えば「新入社員研修」をより具体的にした「ビジネスマナー」や「企業理念の理解」といったものを意味します。

これらのさらに具体的な内容に関してどこまで教育体系として掘り下げるかについては、特に正解がありません。会社の文化によるところもありますので、ぜひ積極的に社内で話し合うようにしてみてください。

なお、集合研修の3分類における代表的な研修内容は以下のとおりです。
階層別研修…ビジネスマナー研修、マネジメント研修など
職種別研修…交渉力向上研修、プログラミング研修など
全社共通研修…情報セキュリティ研修、メンタルヘルス研修など

より具体的な研修内容と研修体系の作成方法については、ボリュームがかなり多くなるため別の記事であらためて紹介しています。ぜひそちらも参考にしてみてください。

3.研修内容を絞り込む際の3つのポイント

最後に、先ほどのステップ④で研修内容を絞り込む際に押さえておきたい大切なポイントを紹介します。
研修内容を絞り込む際は、現場でのニーズを把握することに加えて、以下3つの主なポイントを注意するようにしてください。

1.経営戦略・理念と一貫性を持たせる

研修に関わらず会社として費用をかける際には、基本的に経営戦略や経営理念に沿っているかという基準で判断されることが望まれます。
そのため研修体系を自分で考え会社へと一案を示す際には、経営戦略や経営理念との結びつきも重要です。

例えば、会社として時代の変化に合わせて社員の多様性を重視していくという方針が打ち出されているにも関わらず、従来通りの画一的なマネジメントのやり方を研修で教えていくような想定で教育体系を作っては、経営戦略・理念と一貫性があるとは言えません。

マネジメント研修は毎年実施しているという場合でも、このようなケースでは個人の多様性を生かしたマネジメントのやり方を研修に取り入れるといった見直しが求められます。

上記のような新しく掲げられた方針だけでなく、普遍的な経営理念や経営戦略についても事前に社内で話をして理解を深めておくと、それらと一貫性のある研修を考える上でスムーズでありおすすめです。

2.キャリアパスに多様性を持たせる

厚生労働省の発表(2018年)によると、役職についていない人の6割が管理職に就きたくないと考えることがわかっています。

昇進を望まない人の目線で考えた場合、マネジメント基礎研修などを受けても自分にはあまり関係がないと考えるため、受講する際にモチベーションは大きく低下します。

上記のようなマネジメント研修以外でも、現在は多様化するキャリアに合わせて様々な教育の選択肢が求められる傾向にあるため、全社員が昇進昇格を目指していることを前提とするような教育体系はあらためて社内で議論することをお勧めします。

なお、上記のようなケースでは一つの方法として選択研修や選抜研修も有効です。こちらに関してはあらためて別の記事でまとめる予定です。

3.社内リソースとの整合性を持たせる

実際に教育体系を考え始めると、現場からの声もあいまって、あれも教えたいこれも教えたいとどんどん内容が膨らんでいくことが多いです。
しかし実際には社内リソース(お金や時間)との兼ね合いで、すべて実施することは非常に難しいと言えます。

この例として一番多いのは、お金(予算的に可能か)と時間(現場から全員を集められるか)です。またこの他にも、講師や、現場での効果測定は誰がするのかといった人に関するリソースなど、様々な社内リソースとの兼ね合いを考えることが実際に教育体系を決定する上では求められます。

そのため、教育体系を考える際には並行して社内リソースを洗い出すようにしておいてください。

社内リソースを確認する方法としては、現在の研修状況を確認するという方法があります。
基本的に現在の研修状況はフルに社内リソースを使っている状況であることが多いため、あらためて「なぜ現在の研修状況なのか(他の研修をしないのか)」を考えてみることは、社内リソースの理解をするための近道と言えます。

以上、この記事では誰にどのような研修を実施するかということを体系的に整理する方法をお伝えしましたが、次の記事では教育したい内容を絞り込んだ後に、それをどのような手法で教育することが好ましいのかということについて整理します。
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