2021.01.11

研修を見直す方法|アンケートでは不十分!論理的に課題を導き出す

このページでは、個別の研修にフォーカスし、これまで実施してきた研修の良い部分や問題点を確認し改善案を考えるための手順を紹介します。

なお、実際に改善した後で最終的にどう効果検証すればいいのかという方法も別の記事で詳しく説明していますので、ぜひあわせてご確認ください。

1.社員が意欲的に学ぶ研修の特徴

研修を改善する際の方向性として推奨されるのは、その研修が、社員が意欲的に学ぶ研修になっているのか、ということです。

研修には費用も時間もかかるため、社員を集めて研修を実施できるのは入社直後と年に1~2回程度という企業が多いのが実情です。しかしながら、受講者に学ぶ意欲がなければその貴重な研修の機会も無駄になってしまいます。

ここで注意していただきたいのが、「教育」と聞くと無意識に学校教育のスタイルを思い出してしまいがちですが、大人と子供で適切な教育アプローチは異なるという点です。

子供には子供向けの教え方があり、大人には大人向けの最適な教え方があります。その違いをまとめたものを、成人学習理論と呼びます。

「成人学習理論」

子供教育 成人教育
学ぶ内容 決められたものを素直に学ぶ 自分で決めたい
理解のしかた 知識としてそのまま覚える 自分の経験と結びつけて覚える
学習意欲 年齢などによる意欲の変化はなし 役職などが変化した時に高まる
学ぶ目的 教材の理解やテストの回答 自分が抱えている課題の解決
学ぶ動機 誰かに叱られたくない、褒められたいといった外的要因 自分が知りたい、面白く感じるといった内的要因


これらの違いを一言にまとめると、「大人に意欲的な学習態度を求める場合は内容自体を本人にとって魅力的なものとしなければいけない」ということです。
子供と違い、学習態度について叱ったり褒めたりするだけでは、実は学習効果はほとんど変わらないのです。

そこで次に考えるべきことは、研修自体の魅力です。

2.受講者にとって魅力的な研修とは

魅力的な研修内容を考える上で最も代表的で実際に活用しやすいものが、ARCSモデルという考え方です。

ARCSモデルとは、受講者の学習に対するモチベーションを向上・維持させるためには、注意喚起(Attention)、関連性(Relevance)、自信(Confidence)、満足感(Satisfaction)
の4つの側面に分けて考えるのが効果的であるという考え方です。

注意喚起(Attention)

「面白そうだ」、「もっと知りたい」と、受講者の興味や探求心を刺激する側面です。「新鮮さ」、「ユーモア」、「オリジナリティ」などは全て注意喚起の側面に含まれます。例えば最初で研修タイトルや概要、講師のパーソナリティーなどに興味を持てなければ、どれだけ素晴らしい内容でも話半分に聞いてしまいます。

関連性(Relevance)

「自分に役立ちそうだ」と、学習することの意義を感じさせる側面です。例えば、論理的思考力を養う研修を行う際には、講義で習った考え方を生かして社内提案書を作成するといった参加型の内容を盛り込むことで、関連性を感じてもらいやすくなります。

自信(Confidence)

「自分でもやればできそうだ」と、スキルの獲得に期待を持たせる側面です。学習の難易度が高すぎるとモチベーションの低下につながる可能性があります。学習の過程で理解度テストを行う、最初は簡単な内容から入り徐々に難易度を上げていくなどの工夫が求められます。

満足感(Satisfaction)

「学んでよかった」と、学習に対する満足を感じさせる側面です。一番いい方法は、学習したことを業務に生かせたと感じてもらうことです。自己評価だけでなく、上長から「学んだことを生かせていますね」といった評価を受けるとより高い満足感を得られます。

そのためには、研修担当者が受講者の上司に研修内容をしっかりと説明するなどの連携が必要な場合もあります。上長評価については、別の記事で詳しくお伝えしています。

子供教育と違い、成人教育は「自分でビジネス書を読む時」をイメージしてもらうと理解しやすいかもしれません。

まず、タイトルや表紙のデザインなどで興味を持てなければ本を手に取りません。(注意喚起)
手に取った後、目次や中身をパラパラと見て実用性を感じなければ読もうと思いません。(関連性)
読み進めていく中で、理解できないところがあれば途中で止めてしまう人も少なくないです。(自信)
読後に読んで良かったと思えなければ、次また新しい本を読もうと思わなくなります。(満足感)

大人に意欲的な学習態度を求める場合は、以上のように一連の流れとして魅力的な研修にする必要があるのです。

3.研修を見直し改善点を考える

研修を改善する際には、受講者の学習意欲を引き出すことができるような魅力的な研修になっているかという観点で考えることをお勧めします。
しかし、受講者のアンケートや受講者の上司の声で研修を評価するだけは、誰のどのような意見を採用すべきかという判断材料がありません。

そこで、アンケートだけではなく、ARCSモデルのように確立された理論に基づいた評価を同時にすることで、論理的に研修の課題点を導き出すことができます。

現在行っている研修が魅力的な内容になっているかどうかを、ARCSモデルの4つの観点でぜひ一度振り返ってみてください。

研修の魅力 実施例
注意喚起(Attention)
受講者の好奇心を刺激して面白そうだと思ってもらえる工夫ができているか
・話題性のあるニュースを題材として扱う
・インパクトのある映像を見せて興味を引く
・社内事例や他社事例を取り上げることでテーマを身近なものと感じさせる
・受講者の常識を覆すような内容にする
関連性(Relevance)
業務上の課題と研修を結びつけるなどやりがいを感じてもらえる工夫ができているか
・実務を想定したケーススタディの実施
・受講者が直面している課題についてヒアリングし内容に反映させる
・受講者のキャリアプランや直近の目標をヒアリングし内容に反映させる
自信(Confidence)
段階的に習得している実感を与え、やればできそうと感じてもらえる工夫ができているか
・習得までの道のりをイメージさせ、近い将来自分も習得できると感じさせる
・グループワークやロールプレイングなどの実践の場を通じて「できた」と実感させる
満足感(Satisfaction)
やってよかったと感じるように学習したことを業務に生かせるような工夫ができているか
・適切なタイミングで理解度や目標への到達度チェックを行い、継続学習を支援する
・上長評価やテストなど、学習の成果を本人が実感できる環境を整える


上の表では4つの観点についてそれぞれ実施例も記載していますので、現在行っている研修で足りないなと感じる要素がありましたら、参考にして改善手段を考えてみてください。個別の研修の内容に関しては、きっといい案が出てくるはずです。

ただし、実際には一つ一つの研修は全体の教育計画に基づいて内容を決めていくことになるため、個別の研修内容を見直すだけでは教育内容の一貫性が評価できないなど、研修の見直しとしては不十分な部分があります。

そこで次のステップでは、役職や等級毎に求められる役割に基づいて教育の全体像を設計する方法をお伝えします。個別の研修内容だけでなく全体の内容を踏まえて考えたい方や、企業における教育体系の基礎をあらためて体系的に知りたいという方は、ぜひご覧ください。
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